柔らかさと固さとあたたかさと冷たさを同時に感じたからだろうか、
思いもかけぬ刻限に目を覚ました私の傍らにいたのは思いをかける男だった。
以前にも一度あったこの行動を私はどう解釈したらいいのかがわからない。
彼は何を思ってここまで来たのだろう。
私はその弱さを受け止めるべきだろうか。立場にそぐわぬ行為を咎めるべきだろうか。
しかし、彼の寝息は安らかだ。
この安寧はこの室のこの場所によってのみ彼に与えられるものであろうか。
私は彼の寝入り端にいたことがないからわからない。
(私は自惚れているのかもしれない)
だが観測し得る限り、彼の寝息は安らかだ。
願わくば、有史以来最も長い夜がこの国の上にもたらされんことを。
そして願わくば、有史以来最も遠い朝が彼のために訪れんことを。

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