短文をまとめたページです。
夏のモフモフたち(魏獣化)
高めの珈琲(現パロ)


(擬獣化)

炎「なあ、于禁」
雷「なんだ」
炎「……傍に行ってもいいか」
雷「…………しばらく無理だ」
炎「うわあああん夏嫌いだ!!」
雷「以前は夏が好きだと言っていただろう……」
炎「お前にくっつけないからもう嫌いになりました!」
雷「…………」

[夏の炎虎権さんと雷熊于禁さん おわり]
雷熊于禁さんは樹上の陰で炎虎権さんはその下に生えてる丈高い草の陰。木の陰にいる黒熊の溶け込みっぷりと森の木漏れ日にいる虎の擬態っぷりはすごい。


(現パロ)

 炎天下、ようやく見つけた珈琲店に于禁と連れ立って駆け込んだ孫権ではあったが、メニュー表に載っていた「珈琲 二十五元」の字に目を剥いてしまった。よくよく店構えを見もしないで涼めればいいと思っていたばっかりに、ずいぶん高級な店に来てしまったらしい。
 しかし、席に着き水を出されてしまった手前何も注文せずに出るわけにもいかない気がする。ましてや、思い人の前である。“あの”曹操の配下だ、おそらく彼自身もハイソサエティな人物なのだろう。詳しい話を聞いたわけではもちろんないが、孫権は勝手にそう思っていた。
 ああ、どうしよう。二十五元。欲しい本があって生活費を切り詰めていたところにこれはあまりに懐が痛い。しかし素直にそう口にするのはみっともない。ちらりとテーブルを挟んで向かいに坐る于禁を視線で見上げると、彼も、しかし、難しそうな表情をしている。
 ……どうしたのだろう?
「……孫権」
「んっ?」
 不意に小声で呼ばわれて孫権は返事を裏返らせた。于禁は彼の様子に構いもせず、やはり難しそうに眉根を寄せて小声で続ける。
「珈琲二十五元は、私には少々高額に思える」
「!」
 孫権はぴっと姿勢を伸ばし、それからうんと体を丸めて于禁のほうに上半身を寄せた。
「私もそう思っていた!」
 小声で興奮したように答えると、于禁は少しだけ目を見開き、それから眦を細めた。
「お前もか。よかった。ここはそういう店だったようだな。だが、勉強代か」
 奢ろう――于禁はそう言い、珈琲ですまぬが、と添えて店員を呼んだ。言葉を返せぬうちに注文を終えメニュー表を閉じる彼に、孫権はようやく慌てた。
「いや、それでは悪い! 自分で払うよ」
「この場は私が持つ。次の機会に、お前に馳走になろう」
「!!」
 またしても孫権はぴぴっと姿勢を正してしまう。次――次があるのか!
「わ、わかった、ならばそれで。ごちそうさま。今度はうんといいのを奢ろう」
「ああ。楽しみにしている」
 そうして水をひと口飲む于禁の、やわらかな伏し目がちに孫権は頬を赤らめる。
 テーブルを挟んで向き合う彼との距離が、少しだけ縮まったような気がした。

[高めの珈琲 おわり]