第31回ワンライ参加作品(2023/09/16)
【本日のお題(このなかから1つ以上選んで書く/◎…使用したお題)】
 ほんのちょっとの○○(○○は変換可能)
 キッチンタイマー
◎攻撃と防御
 ブランケット
 破り捨てる


 地面を蹴り上げる。
 顔面を守るようにクロスされた腕に、右腕に握ったトンファーのシャフトの先端を強打させれば、やつはぐっとその交差した腕をシャフトに沿うように横に流し、姿勢を低くして僕の懐に飛び込んできた。
 僕は右腕を引き、今度は左腕のトンファーを相手の打撃から腹を守るように構えると、そのまま右回りにぐるりと上半身を引く。突き出されたやつの右爪を避け、勢いで右腕を下から上に振り上げた。
 やつは顎をぐっと反らし寸でのところでそれを避けた。そのまま両手を地面について背中側から足を跳ね上げる。さほど重さの乗らない蹴り攻撃――だが、僕は二、三歩飛び退き構えを直した。やつが全身のどこに麻痺毒を仕込んでいるか見当もつかない相手なのを忘れていた。
 足を下ろし、しゃがみ込んだ体勢からやつはゆっくりと立ち上がる。左手の平を空に向けて突き出し、右手の爪をこちらに向けて顔の横に構える。僕もくるりと右腕のトンファーを一回転させて、左腕を奥に、右腕を手前に構えて右足を引いた。
 じり、と足を地面に擦りながらお互いに右に動く。飛び込んできたのはやつのほうだ!
 姿勢を低く取り一度の蹴りで瞬時に僕との距離を詰め、勢いのままにやつの左爪が僕の腹を狙う。僕は立てた左腕のトンファーでそれを受け止め、右腕のトンファーでやつの肩を強かに打った。弾き飛んだやつは中空で体勢を立て直すようにすぐに地面に右手をつき、ぐんと腕を伸ばして反り返り、宙を一回転して地面に着地する。
「え、捻ってないん」
 僕は思わずそう口にした。やつはぱちぱちと瞬いてぐるりと右手首を回転させてみせる。
「ないよ」
「やわらかっ」
「今更」
 やつは改めて構え直した。僕も、今度は左腕を真っ直ぐに突き出し、右腕をぐっと引く。
「次はこっちから」
「順番もないって」
 再びぐっと身を低くし、今度は両腕をだらりと下げるやつが鼻で笑う。僕もまたにやりと口の端を歪め、何か言われる前に地面を蹴って飛び上がった。